ヘッドホンのケーブルは長さと太さで音が変わる?0.5m・1.2m・1.5mの直流抵抗と容量を計算する

変わりますが、多くの人は聴き分けられません。0.05mmの素線を9本束ねたものを24束にした1.2mの無酸素銅ケーブルは、往復の直流抵抗が約0.10Ω。同じ構成の0.5mは約0.04Ωです。3Ωの低インピーダンスイヤホンでは音圧差が0.16dB、32Ωのヘッドホンでは0.03dB未満。長さが効いてくるのは細い線、長い線、大電流の出力で、1.2mを1.5mに変える場面ではありません。
1m伸ばすと直流抵抗はどれだけ増える?
純銅の抵抗率1.7×10⁻⁸ Ω·mで計算すると、0.424mm²の導体は1mあたり約40mΩ。信号は往復するので2倍の長さを使います。1.2mなら往復2.4mで約96mΩ、0.5mで約40mΩ、1.5mで約120mΩです。
この値にピン、はんだ、プラグの接触抵抗は入っていません。2pinのピン1本で5-20mΩは珍しくなく、4本分で短いケーブル本体に近づきます。テスターはプローブを短絡してゼロを取ってから測らないと、読み値の半分がプローブになります。
| ケーブル構成 | 導体断面積 | 往復抵抗(1.2m) | 3Ωイヤホンでの分圧損失 | 32Ωヘッドホンでの分圧損失 | これが意味すること |
|---|---|---|---|---|---|
| 24束 × 9本 × 0.05mm、1.2m | 約0.42mm² | 約0.10Ω | 約0.27dB | 約0.03dB | 通常の長さ。音圧差は聴閾の下 |
| 同構成、0.5m | 約0.42mm² | 約0.04Ω | 約0.12dB | 約0.01dB | 損失が最小。机上の一時使用に十分 |
| 同構成、1.5m | 約0.42mm² | 約0.12Ω | 約0.34dB | 約0.03dB | 0.07dB増。立って使うなら許容範囲 |
| 16束 × 14本 × 0.06mm、1.2m | 約0.63mm² | 約0.06Ω | 約0.17dB | 約0.02dB | 束数は少ないが素線が太く、断面積は大きい |
| 一般的な細線 0.08mm²、1.2m | 約0.08mm² | 約0.50Ω | 約1.3dB | 約0.13dB | 低インピーダンスでは明らかに濁る。交換対象 |
24束と16束、どちらが太い?
束数は構造、断面積が電気的特性を決めます。24束×9本×0.05mmは216本で合計約0.42mm²、16束×14本×0.06mmは224本で約0.63mm²。後者は素線が太く本数も多く、直流抵抗は約3割低くなります。
LITZ構造は各素線の位置を長さ方向に入れ替え、交流電流を均一に近づけます。20kHzでの銅の表皮深さは約0.46mmで、0.05mmの素線は断面全体が表皮の内側に収まります。音声帯域で表皮効果はほとんど問題になりません。LITZは高域と長距離伝送への余裕として効きます。
容量で高域が落ちる?
1.2mのツイストペア線の分布容量はおおよそ40-80pF。80pF、32Ω負荷ならRCの折れ点は60MHz以上で、20kHzとは3桁離れています。
10mのラインケーブルを10kΩ入力に繋ぐと、1nFで折れ点は約16kHzになり、高域が下がり始めます。これは長いラインケーブルの話で、ヘッドホンケーブルの話ではありません。ヘッドホンの負荷は低いので容量はほぼ効きません。
長さの差が聴こえる条件
3つが揃う必要があります。イヤホンが4Ω未満で能率105dB/mW超、アンプの出力電流が十分でケーブル抵抗の比率が上がる、2本のケーブルの直流抵抗差が0.1Ωを超える。1つ欠けると測定のばらつきに埋もれます。
ブラインド試聴では音量を合わせます。同じプレーヤー、同じイヤホン、同じイヤーピースで、両者の音圧を0.1dB以内に揃え、それぞれ10回以上聴きます。広帯域で0.3dBの差なら、多くの人はまだ当てずっぽうです。
ケーブルのタッチノイズも判断を乱します。襟や机に触れる音は抵抗差よりはるかに大きい。ケーブルを固定してから比べると比較が澄みます。
0.5m・1.2m・1.5mの選び方
0.5mは机の上のドングルDACとスマホに向きます。ケーブルが絡みません。
1.2mは汎用。ポケット、ノートPC、机のどれでも足ります。KSHF-24GとKSHF-16Gの完成品は1.20-1.25mです。
1.5mはスタンディングデスク、ソファ、スピーカーの近く向け。0.3m増えて抵抗は約0.02Ω増えるだけで、電気的には無視できます。代わりに引っ掛かりやすくなります。
長さより構造です。ストレートプラグはポケットで折れやすく、耳掛けはタッチノイズを減らします。プラグは規格を合わせてください。3.5mmシングルエンドと4.4mmバランスは互換しません。
よくある3つの誤解
1つ目、線が長いほど音が濁るという決め込み。1.2mから1.5mで抵抗は0.02Ωしか変わらず、極端に低いインピーダンスでなければ聴こえません。
2つ目、太さで音を判断すること。太い線が下げるのは抵抗で、音作りではありません。0.63mm²と0.42mm²の差は3Ω負荷で0.2dB未満です。
3つ目、ケーブル交換で全部直るという期待。接触不良、はんだ割れ、ピンの酸化は数Ωの変化を生みます。交換して大きく変わったのは、接触が直ったからです。
自分で測る
4桁半のテスターで足ります。プローブを短絡して底値を記録し、L+からL-までの往復を測って底値を引きます。1.2mの24束線は0.1Ω前後、0.3Ωを超えたらピンとはんだを確認してください。
4線式ならプローブと接触抵抗を排除でき、より正確です。4線式がなければ同じケーブルを3回測り、再現性を見ます。
背景としてケーブルの導電と構造、銅の純度とLITZ、アップグレードケーブルの選び方、タッチノイズも読めます。
この記事の筆者:KEYSION 音響コンテンツ班。ケーブルとDACをテスターとブラインド試聴の両方で確認しています。文中の抵抗値は純銅としての計算値で、実際の製品はピン、はんだ、長さの公差で変動します。聴感の結論は私たちの試聴条件に限ります。
FAQ
1.2mのケーブルを1.5mに替えると音は変わりますか?
多くのシステムでは聴こえません。往復抵抗は約0.02Ω増え、3Ωイヤホンでの音圧差は0.1dB未満です。イヤホンが2Ω未満、または出力電流が非常に小さい場合を除きます。
束数が多いケーブルほど音が良いですか?
束数は構造の話で、抵抗を決めるのは断面積と純度です。24×9×0.05mmは約0.42mm²、16×14×0.06mmは約0.63mm²で、後者の直流抵抗は3割低い。通常の負荷では聴感差は小さいです。
0.5mの短いケーブルは低域が良くなりますか?
抵抗が低く損失はわずかに減りますが、差は通常0.2dB未満。低域を決めるのはイヤーピースの密閉と通気孔で、0.06Ωではありません。
テスターでケーブル抵抗を測れますか?
3桁半のテスターは粗い選別向けです。プローブを短絡してゼロを取り、0.3Ωを超えたらピンを確認します。10mΩまで見るなら4線式か定電流源が必要です。
ケーブルの容量で高域が曇りますか?
ヘッドホンケーブルの容量は数十pFで、折れ点はメガヘルツ帯です。10m以上のラインケーブルを10kΩ入力に繋いだときにだけ、測れる高域の減衰が出ます。


