SNR・ダイナミックレンジが高くて歪みが少なければ、本当にいい音なのか?KEYSION 02 Pro の実測データと実聴の差

スペック表と実際の音のバランスを取ろうとしている人へ。この記事は一つの問いに答える:SNR、ダイナミックレンジ、歪み率が高いほど、必ずいい音になるのか、ということだ。結論を先に言うと、数字は「機器自体がノイジーか、情報をどれだけ残せるか」を示すもので、「音がいいか」は示さない。音作り、電源、ヘッドホンとの相性はすべて数値には載っていない。だからスペックは見るべきだが、スペックだけを頼りにヘッドホンを買うべきではない。
SNR(信号対雑音比)は信号と背景ノイズの比で、単位は dB。数字が大きいほど静かなことを示す。人間の耳が区別できる限界はおよそ 60-90dB。一般的な PC のオンボードサウンドカードは 90-100dB、外付け DAC は 115-135dB 程度だ。問題は、ある範囲を超えたあとはいくら数値を上げても人間の耳では区別できないこと。それは「よりいい音」ではなく、ただスペック表がきれいになるだけだ。
KEYSION 02 Pro の SNR は 4.4mm 出力で 135dB、3.5mm 出力で 130dB と標記されており、外付けドングルDAC の中でも上位に当たる水準だ。ただし標記値は理想条件で測ったもの。実際に高感度イヤホンを繋ぎ、マザーボードの供給ノイズを受けたときにどこまで保てるかは、また別の話になる。
ブラインドテストでは、多くの人は 115dB と 135dB の機器の間で底ノイズの違いを聞き分けられない。本当に違いを感じるのは、低ゲインで高感度イヤホンを繋いだときか、給電が汚れている環境で使うときが多い。
ダイナミックレンジは、いちばん大きい音といちばん小さい音の間にどれだけのコントラストを収められるかを表し、単位は同じく dB。クラシックやライブ録音で特に重要だ。こうした音楽は強弱の振れ幅が大きいからだ。ダイナミックレンジが足りないと、弱いフレーズが底ノイズに埋もれ、小さな音はぼやけ、大きな音は迫力不足になる。
02 Pro は 135dB@4.4mm・132dB@3.5mm、02 は 130dB、01 は 130dB@3.5mm と標記している。ほとんどのポップ、ロック、ポッドキャストでは、130dB と 135dB の差は実際に聞いても分からない。ハイレゾのクラシックを聴く環境のある人には、SNR よりもダイナミックレンジの方が見る価値がある。
一言で言えば、SNR は「静かかどうか」を決め、ダイナミックレンジは「大小の音を両方聞き取れるか」を決める。ダイナミックレンジだけを見る方が、「この機器がどれだけの情報を収められるか」に近い。
THD(全高調波歪み)は、出力から入力を差し引いたとき、余分に乗る高調波成分がどれだけあるかを示し、値が小さいほどクリーンだ。02 Pro は -121dB@4.4mm(約 0.00009%)、02 と 01 は -115dB(約 0.00018%)と標記している。これらの数字は、人間が聞き取れるおよそ 1% のしきい値よりはるかに低い。
まずデータを見ると、この 3 台は「歪み」の項目で失敗しにくい。大半のリスニングシーンでは、-115dB と -121dB の差は測定でも、まして聞いても区別できない。本当に注意すべき歪みは、ゲインを最大まで上げてダイナミックの大きな交響曲を全力で鳴らしたときに出ることが多い。そのときは出力のマージンが足りなくなり、THD の数字自体よりも問題が現れやすい。
| スペック | 02 Pro(CNY 499,USD 74) | 02(CNY 349,USD 52) | 01(CNY 219,USD 33) | それが意味すること |
|---|---|---|---|---|
| SNR | 135dB@4.4mm / 130dB@3.5mm | 130dB@4.4mm / 125dB@3.5mm | 130dB@3.5mm | いずれも人間の識別範囲を遥かに超えており「静かな」グループ |
| ダイナミックレンジ | 135dB@4.4mm / 132dB@3.5mm | 130dB | 130dB | ハイレゾのクラシックで意味を持ち、ポップでは差がほぼ無い |
| 歪み率(THD) | -121dB@4.4mm | -115dB | -115dB | いずれも可聴域以下で、弱点になりにくい |
| 底ノイズ | 1.30μV@4.4mm | 1.02μV@4.4mm | 0.85μV@3.5mm | いずれも低く、高感度イヤホンで聞こえるかはゲイン次第 |
| 最大出力 | 551mW@32Ω | 361mW | — | 02 Pro は出力マージンが大きく、駆動の難しい大耳に適する |
USD 換算はシステムレート 0.1488 による:499→74、349→52、219→33。
3 台のデータはどれも十分。本当の差はスペック表の外にある。ひとつは電源。ドングルはスマートフォンの USB から給電するため、給電がきれいかどうかが実際の底ノイズに直結する。ふたつ目はイヤホンとの相性。高感度の BA と 600Ω の大耳を比較すると、同じ機器でも挙動がまったく変わる。みっつ目はゲイン設定とフィルター。02 Pro と 02 にはゲインモードと DAC フィルターが備わっており、これらの設定はスペック数値そのものより音を大きく変える。
だから機材選びでひとつの数字だけを見てはいけない。まず、主に何を聴くか、どんなイヤホンを使うか、どこで使うかをはっきりさせよう。スペックは明らかに合わない候補を除外してくれる。残りは試聴と相性で決める。
- SNR、ダイナミックレンジ、歪み率は「実用上のライン」を超えていれば十分で、数字の最大化を追う必要はない。
- 底ノイズは THD よりも見る価値がある。高感度イヤホンをどれだけ静かに鳴らせるかを決めるからだ。
- 本当に比べたければ、同じ音量・同じイヤホン・同じ曲で比較してから結論を出す。
- 「32bit/768kHz」のような派手なスペックに振り回されないでほしい。フォーマット対応が音の良さに直結するわけではない。
最後に一言:これらは工学上「測れるか」の話であり、「いい音か」のすべてではない。誤読されやすい別の指標を知りたい人は、こちらの記事をどうぞヘッドホンの周波数特性曲線の読み方。底ノイズにすでに悩んでいるなら、まずこちらをヘッドホンのノイズ・ハムの切り分け。02 Pro や 02 から始めたい人も、商品ページを直接ご覧ください。
本文の執筆者:KEYSION オーディオエンジニアリングチーム。データは 02 Pro・02・01 の出荷時標記および当社測定によるものです。音に関する部分はチームとテスターの主観的な評価で参考用であり、いかなる形でも「特定の指標があれば必ずいい音になる」ことを保証するものではありません。
FAQ
SNR が 130dB と 90dB では大きく違う?耳で聞き分けられる?
90dB から 130dB までの差は確かに大きく、高感度イヤホンで静かな環境なら底ノイズの違いに気づける。ただ 115dB を超えると多くの人には区別できず、指標の差は聴感ではなくスペック表に現れる。
歪み率 0.001% は必要なの?普通の人は気にするべき?
0.001%(およそ -100dB)は、人が聞き取れる約 1% のしきい値よりはるかに低く、普通の人がさらに低い数値を追う必要はない。注意すべき歪みは、大音量でマージンが足りないときに現れることが多い。
ダイナミックレンジとは何で、どんな音楽に向けて大事なの?
ダイナミックレンジは、いちばん大きい音といちばん小さい音の間の幅だ。クラシックやライブ録音で強弱の振れ幅が大きいときに最も敏感に効き、ポップやポッドキャストはダイナミクスが穏やかで 130dB と 135dB の実差は小さい。
スペックが似ている 2 台の DAC なのに、なぜ音が違うの?
音作り、フィルター、電源、ゲイン設定、イヤホンとの相性が聴感に影響するからで、そのどれも SNR や歪み率には含まれない。スペックは明らかな欠陥を除外してくれるが、音色の選択は試聴に頼るしかない。
ポータブル DAC を買うとき、結局どの指標を最初に見ればいい?
最初に底ノイズが自分のイヤホンのインピーダンス・感度と合うかを見て、次に出力マージン、その後に SNR とダイナミックレンジがラインを越えているかを見る。32bit/768kHz のようなフォーマット仕様だけに固執しないこと。

